いわゆる経営コンサルタントの中には、上位1%の「超」繁盛店の成功事例を取り上げ、その真似をするように指導する方が多くいらっしゃいます。
しかし、その「超」繁盛店の成功の背景には、圧倒的な「商品力」や「立地の良さ」などが隠れている場合が多いのです。「普通の」お店では、そこまでの「商品力」「技術力」はありません。よって、「超」繁盛店の真似をしてお店を経営しても、成功する確率は決して高まらないというのが現実なのです。
これは、「真似をしても成功しない」という意味ではありません。真似をして成功するお店も多くあります。しかし、そのお店は「そもそも真似をしなくても成功する可能性が高かった」はずなのです。
つまり、「成功する要因を見つけ出し、真似する」よりも、「失敗する要因を把握して致命的なエラーを起こさない」方が、「普通の」お店が生き残るためには重要だと言うことです。
超低リスク経営の最大の目的は、「最も失敗しにくい」経営を行うことです。失敗しやすいリスクを徹底的に回避することで、「普通の」お店でも、成功率を飛躍的に高めることができるのです。
プロ野球に例えて言うならば、イチロー選手や松井選手のようなスーパースターを目指すのではなく、まずは「1軍に残る」ことを目指して経営する必要があるということです。
超低リスク経営の基本は、長期的な視点で「積み重ね」の発想を持ち、「継続」した改善を行うことです。
顧客リストを増やしながらお客様との関係性を育て、メニューやサービスもよりお客様が受け入れやすいように改善し、スタッフへの教育も長期的な視点で取り組んでいきます。
その結果、お店の財産となる活きた顧客リスト、磨き上げられたメニューとサービス、成長した人財が出来上がるのです。これがあれば、たとえ経営環境が変わってより厳しい時代が来ても、あわてることなく時代に対応していくことができるのです。
一寸先が分からない現在の経営環境において、時代に対応して安定的な経営ができることは、この上ない大きな強みとなるのです。
また、逆に今後景気が上向いてきたり、経営環境が良くなってきた場合でも、これまで培ってきた財産をフル活用し、大きな成長を実現することができます。
厳しい時代に始めた「積み重ね」は、より大きな花を咲かすことができるのです。
一見、超低リスクの経営とは、消極的な経営を意味すると誤解されがちです。しかし、実際には、より積極的な経営を実施することができるのです。
なぜなら、経営のリスクを下げることにより、さまざまな戦略・戦術を実践できるからです。現在の厳しい経営環境において、高いリスクを背負ったままでは、「一度の失敗」が即廃業につながりますが、「超低リスク」の経営や施策を心掛ければ、失敗のダメージはより小さくなります。よって、どんどん積極的なチャレンジが可能になるのです。
飲食店は、お客様が今日来店して、すぐに商品とサービスを提供します。そして、お客様はその場でお金を払って帰っていきます。つまり、数分~数時間で「契約・購入」「サービス提供」「代金回収」までが終わってしまう業種です。
その結果、どうしても短期的、近視眼的な考え方や行動に陥ってしまいやすい業種なのです。
そうなると、短期的、近視眼的な視点で経営したことが原因での失敗が多くなります。
例えば、流行りの業態の店舗を勢いで出店して、ブームが去った後に苦しんだり、お店が儲かっているからと、ムダ遣いをして資金繰りが苦しくなったり、人が育っていないのに店舗展開を焦って、結局破綻したりなど、さまざまな失敗事例があります。
また、近年の飲食業界の経営スピードは大変速まり、2~3年で初期投資を回収しようという考え方が増えてきています。確かに初期投資を早く回収できることは素晴らしいことだと思いますが、2~3年でコロコロお店を変えていくというのは、長期的に見て良い結果をもたらすとは思えません。
つまり、できるだけ早く回収しつつも、長期的に継続できる業態やお店創りを心掛けることが重要なのです。
他のお店は短期的、近視眼的な視点で経営している中、あなたのお店だけは継続的・長期的な視点で積み重ねの経営を実施することができるのです。
超低リスク経営によって、長期的な視点で「積み重ね」の発想を持ち、「継続」した改善を行っていきます。
そして、継続的な改善活動の結果、お店には、「経営ノウハウ」が蓄積しやすくなります。
例えば、チラシやDMの回収率は大体どの程度あり、どれだけ利益が生まれるのか?
さらに、効率的にメニューを改善したり開発したりするためにはどうしたらいいのか?
お金をかけずに求人を行うときには、どんな方法がよいのか?
このようなノウハウがどんどん蓄積されていくのです。その結果、お店の経営は仕組みになりやすく、店舗展開をしやすくなるのです。
これは一見矛盾するようですが、「急がば回れ」という言葉があるように、コツコツ継続した取り組みを行うことが、実は一番の近道につながるのです。
また、最も重要なポイントは、超低リスク経営では、人を育てる風土ができることです。その結果、着実に人が育っていくため、無理のない店舗展開を実現できるのです。
飲食店開業のスケジュール、物件探し、内装コストダウン、採用・育成、財務・税務など、より深い実践ノウハウが満載。
飲食店の開業・経営の成功率を飛躍的に高める7つの超低リスク戦略を詳しく説明した、「失敗しない」ための実用本。
ライズウィル代表 井澤岳志
飲食専門コンサルタントとして、「低リスク」かつ「現場主義」の開業・店舗再生を信条とし、継続コンサルティングにおける売上アップ成功率は94.1%を達成。
「日経レストラン」で支援店舗の成功事例が多数掲載されており、その他、テレビ、雑誌などの取材実績多数。全国での講演実績がある。
2009年に出版した著書は現在12刷3万部のロングセラーとなっている。
海外でのコンサルティング実績として、台湾で年商6000億の大手上場企業の飲食事業支援で成果を上げている。また、自社でも飲食店を経営し、より実践的な成果重視のコンサルティングを行う。
著書
7つの超低リスク戦略で成功する『飲食店「開業・経営」法』(日本実業出版社)
小資本・低リスクで繁盛店をつくる はじめての飲食店開業の教科書(日本実業出版社)